コラム&事例

人材育成のPDCA

公開日:2024.06.21

人材育成

若手人材が定着しない時代

世代が移り変わり、若い社会人の意識も変わってきています。第二次世界大戦後の高度成長期以来、「終身雇用」前提の時代は続いていましたが、最近は、「転職」を前提として就職される若い人がむしろ「当たり前」という時代になっています。

 

そうはいってもまずは、入社して育ってくれないと、会社の戦力にはなりません。その意味では、新人教育というのは極めて重要であり、最終的には自分の意志で転職やキャリアアップの道として退職をする場合があっても、まずは、健全に育ってもらう事が組織にとって極めて重要な使命といえます。

 

ところが、中小企業はリソースが限られており、十分に育成をする時間や手間がかけられないというケースが多いのは事実です。逆なことを言えば、たとえ育成のリソースが限定的であっても、新入社員にとっては「育ててくれ、育っている実感」があれば、それに報いたいという思いになります。

 

ある中小企業の場合

この会社は、40人規模の設備工事業です。設備工事の職人さんを束ねて会社として経緯があり、今は工事の管理をする施工管理部門と直接の工事施工そのものを行う工事施工部門と別れていますが、元々は施工部隊の集まりの会社です。

 

そういう伝統があるため、「技能は一つずつ体で覚えるもの」という認識があります。ですから、絵に描いた餅のような教育や訓練でなく、お客様に一社会人として対応でき、また確実に技能や技術を身に着ける必要があるとの認識を持っています。

 

ただ、逆に言うと職人の世界であり、今でいう「パワハラ体質」で先輩の背中を見て覚えるという伝統があったため、折角入った若い社員が時に5人位順次退職する事態が発生しました。確かに工事現場は、所謂「3K」(きつい、汚い、危険)職場で若者に敬遠されがちです。しかし、当社は財務内容良好で、給与・給与条件とも業界トップクラスです。

 

若手人材不足の課題に向き合う

折角入った若者が短い期間にやめてしまうのなぜか、その原因を考えました。

  • パワハラ体質(怒られて委縮)
  • 現場仕事がいわゆる3K職場
  • 給与・休日充実アピール不足

 

これらに対しては、まずはパワハラ風土廃絶のため、チーフ(親方)層への若手への「接し方教育」を対面で実施して、パワハラ廃絶を意図しました。ただ、現場の3Kは事実であり変えようがありませんが、その3Kの現実を正面からとらえ、その中でできることを順次実施しました。

 

特に入社から3カ月間を大事にし、「この会社は居心地がよく、自分の成長につながる」と認識できることが重要と考え、人材育成の改善を繰り返し、これまで以上の定着率の向上を目指したのです。「職人の会社」という伝統を良い意味でとらえ、『専門家』として育つという希望を与える環境づくりです。

 

人材育成のPDCA

①高校新卒メインの新卒者に社会人教育

最初に取り組んだのは「社会人として健全に育成」することでした。個人別の教育シートを作り、最初に育成内容を記入し、社会人としてのマナーをメンターである先輩が教え、3カ月後にその成果を具体的に評価しました。

②成長のプロセスを評価し改善を継続

3カ月たってから成長の度合いの高い低いを言っても対策が立てられないので、1か月ごとに目標の達成度合を評価することにしました。こうすることで、成長が遅い新人に対し、フォローアップが効くことになります。

③個別スキルをもれなく達成させる

総合面ではよくとも、この業務の経験がない、もしくはまだ十分できないことを見える化して個別に改善するため「スキルチェックシート」を作成しスキル管理しました。

 

この例は、新人教育が足が地につき「人材育成のPDCA」が回っている好事例です。

この記事を書いた人

野澤周永

Nozawa Tomonaga
株式会社Vコンサル代表取締役
経営コンサルタント

「見える成果」を出す事が、コンサルタントのミッションです!

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