コラム&事例

中小企業のホールディングス化

公開日:2024.06.14

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ホールディングスとは

 

ホールディングスとは、会社により、子会社であるグループ内の事業会社の株式を所有し、グループとして事業会社をグループとしての理念や方針の元に管理・経営指導するグループ経営の組織形態をいいます。

 

持株会社には、大きく分けて2種類あります。

① 「純粋持ち株会社」事業を行わず、傘下の企業の株式だけを保有する。
② 「事業持ち株会社」自身の会社も事業も行っている傘下の企業の株式を保有する。


の2種類ですが通常、「ホールディングス」といえば、「純粋持株会社」を指すことが多く、決まりではありませんが、名称も〇〇ホールディングス㈱や、〇〇HD㈱という一目で持株会社であることが分かる名称となっていることが多いです。

 

「純粋持株会社」の場合、自ら傘下の企業からの「配当収入」が主たる収入源ですが、「経営管理料」や「事務管理料」といった形で管理機能やコンサルティング機能にあたる業務を各事業会社から受託して売上収入としている場合も多いといえます。うのみが資金源となります。

 

ちなみに親子間の配当については一定の要件はあるものの、税務上、益金不算入となり原則として課税されないという特徴もあります。

 

ホールディングスの役割と特徴


ホールディングスを取り入れる理由として、グループ全体を方針管理する一方で、個別の事業経営については、各事業会社にゆだねることができます。

 

このことから、事業会社の自主性を重んじることができる一方、方針から逸脱した経営管理については、指導・方針修正が可能であり、一定の範囲を超えた経営管理については、各事業会社経営者の解任といった支配権を有しています。

 

裏返せば、常軌を逸脱した方針管理を行えば、力量のある事業会社経営者の辞任・離脱といった経営リソースの喪失といった事態も招く場合もあります。やはり、そこには、持株会社である親会社と事業会社である子会社の信頼関係が基本にあるといえます。

 

ホールディングス化のメリット

(1)リスク分散できる

各事業会社がそれぞれのリスクを分散して保有することから、グループとしてのリスクの分散が図れるというメリットがあります。

 

例えば、事業会社の内の1社(A社)が大きな損失を出した場合に持株会社は損失を被ることになりますが、他の事業会社は影響を受けずに済みます。

 

この場合、損失を出したA社だけを売却することもでき、その他の事業会社を守ることができます。いわば、不採算会社のみをスクラップ&ビルドが容易にできるということです。

(2)事業会社の高いモチベーションを維持

以前は、1つの会社の事業部であった各部は、ホールディングスにする以前は、いつも定時には帰宅し、安閑とした日常を送っていた、つまり、「つぶれることもない安心感」をもって社員生活に安住していたというケースでも、事業会社として、独立したとたんに業績向上に必死になれるといった状況に一変します。

 

なぜなら、事業会社としての業績が下がれば、自らの報酬の維持もできなくなるが、頑張れば、多くの報酬を獲得することが可能になる、いわば一国一条の主(あるじ)を親会社の一定の支援の元に行えることになります。

 

これにより、事業会社とした高いモチベーションを維持しつつ、事業運営ができることとなります。

(3)各事業会社同士のシナジー創出や組織再編の容易さ

ホールディングスの管理下での各事業会社の経営となることから、事業会社相互にお互いのメリットになる取引のつなぎや仲介が親会社の目線で行うことができます。それにより、グループ経営や事業管理の全体最適化を図ることができます。

 

また、グループ内で合併する方が効率いいとか、分社化して、別事業としたほうが効率いいといった場合に、ホールディングスの方針で容易に組織再編ができるメリットがあります。

 

当然のことながら、相応の経営管理力がホールディングスに求められることから、経営者や外部リソースである専門家や経営コンサルタントの力量の活用も有効になります。

 

ホールディング化の課題

(1)ホールディングスのMVVを明確に

ホールディングス化を取り入れる場合は、グループが何を目指すが、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を明確にしてグループとしての事業運営の設計を行い、スピーディに実行していくことが必要です。

 

そしてグループとしてのシナジーを生むためにはグループのブランディングとして、例えばSDGsにグループで取り組むとか、社会貢献活動を総力戦で行うなどの直接収益につながらない活動の展開によりグループとしてのブランド力も上がり、認知度を高め、売上向上につなげていくことができます。


(2)各事業会社の連携を意識する

ホールディングスの傘下である各事業会社の意思疎通や情報共有をホールディングスとして意識的に推進し、連携を意識して各事業会社に事業運営してもらうことが重要です。

 

しかしながら、グループ内でも互いに甘えることなく、グループ外よりサービスや価格に面でも自社を使ってもらえる品質の高さを保持するといった、意識を持ち合うことも大切であり、このグループの意識づけはまさにホールディングスの役割といえます。


(3)管理の集中化・効率化を意識

管理面は、とりわけホールディングスで集中管理を図り、コストを最小化する働きかけが必要です。例えば、共通のシステムを利用する、同じ情報共有ツールを使用するなどして、DX化も推進して、管理コストダウンによるグループとしての生産性向上を意識的に実現することが重要です。

 

最近は、中小企業でも、ホールディングス化するところが増えてきており、グループとしての効率化が意識されています。

 

皆がそれぞれの立場で経営に参画し、グループへの貢献と同時に、自らの経営業務へのモチベーションを高めていくホールディングス環境はこれからの時代の経営にマッチしているといえます。

この記事を書いた人

野澤周永

Nozawa Tomonaga
株式会社Vコンサル代表取締役
経営コンサルタント

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