業務がきちんと回っているか~経営の基本に立返る~
業務改善
組織強化
環境に翻弄される中小企業と経営者
中小企業経営コンサルティング会社を始めて今年で20年目になります。この間に、社会経済の状況は山あり谷ありで、リーマンショックや東日本大震災、アベノミクスそしてコロナ禍、ChatGPTの出現等々様々な環境変化がありました。
そういった環境の変化の中で中小企業とその経営者の皆さんを見て感じるのは、その時々の状況に「振り回されている」ということです。
例えば、コロナ禍は、ビジネスや生活にも未曾有の変化をもたらしました。IT化・DX化が促進し、リモート化が進みました。その一方で『補助金バブル』や『ゼロゼロ融資』で企業努力なしで危機を乗り切れるという、ある種徳政令に近い救済策が打たれました。
「優遇策」と言えば聞こえはいいですが、逆に「しくみの健全化」のチャンスをスポイルしてしまう悪弊を生んでいるという見方もできます。本質的に軸のぶれない骨太の経営とは何か考えてみたいものです。
日々の業務に目をやろう
高額の補助金・給付金そして資金がとりあえず回り、破産防止目的の資金調達がなされることは、資金的にも、事業的にも相撲の力士が土俵の得俵(とくだわら)に救われるような状況になります。また、今日、IT化やロボット化、パソコンの高機能化、インターネット情報の多様化、ChatGPT等生成AIの活用が進みました。
これは、大変便利な反面、組立やロジックを考え、各業務の意義や本質を見つめることがおろそかになっていないでしょうか?自動化することは、効率化の反面、人が楽になり、その楽さに甘えてしまいがちだと言えます。
中小企業の業務推進のあり方を拝見していると、ITシステムを使うことに心理的抵抗感があり、進化を拒む会社は成長のチャンスを失っています。その一方で、システムを使いこなしいる会社は、逆にIT設備の効率化に甘え、人が汗をかく努力や知恵の活用が阻害されているケースが多々みられます。
経営の基本とは何か考えよう。
よく「結果オーライ!」という言い方があります。「結果良ければすべてよし。」ということですが、逆を言えば、『結果がよかっただけで、プロセスに問題があった』という風に言い換えることもできます。
つまり、資金が回り、会社が生き延びればOK。また、システムが導入されて楽になったから、うまく回っており問題なしと言います。資金やシステムといったリソースが問題なければ、人はついていけばよいのか?そうではないはずです。資金をうまく活用し、システムを使いこなすことこそ、人の役割といえます。
資金やシステムは相応に活躍してくれますが、それを有効活用し、改善を図ることこそ人の役割なのです。その人が考え、進化して、経営や業務の改善が図られないと、更なる環境変化・天変地異の変化の波についていけないことになります。変化を予測し、想定外にも立ち向かう力は人にこそあります。
「楽」こそ戒め、正念場を乗切る力を
人は苦しいときは、目の色が変わり、冗談も言えません。しかし、「楽」であるときは、その平和に安心してしまいがちです。平和な時だけが続くことはあり得ません。
経営は、常に環境の変化にさらされています。ですから、良いときやシステム化が進んで楽になった時に安心する、あるいは、厳しいときに助け舟である特別の資金提供に安心して、本来構築すべき、業務のしくみづくりや人づくりをおろそかにすることは、経営としての生命線を失うことになりかねません。
業務がきちんと回るためには、資源(リソース)が適切に配置され、業務の各プロセスで適切に利用され、必要なことは標準化されて、確実に実施されていくことが必要です。そうでないと、お客様の信頼は構築できませんし、将来に向けて、永続的な経営の維持は困難になります。