経営資源のメインテナンスとは
組織強化
財務・資金

Ⅰ.中小企業と大企業間の大きな資源差
経営に必要なリソース(資源)とは、「人・モノ・金・情報」です。これら項目には、大企業も中小企業との間に違いはありません。
しかし、当然のことながら、「資源の充実」という意味では、大企業と中小企業の間には大きな差があります。当たり前の話とは思われるでしょうが、以下の文で詳しくご説明しましょう。
(1)人
今は大企業に就職しても「ここで骨をうずめる」と考える若い社員は少なく、「自分のキャリア形成のためにとりあえずここにいる」と言って大企業に就職する方も少なくありません。
しかし、そうはいっても、大企業は中小企業に比べ給与相場も高く、しかも「給与に支払う資金がない」といって給与が支払われないということは一部の倒産寸前の企業を除いてはほぼありません。
つまり「当然に」給与は払われる状況にあります。すなわち、安定して高い給与が支払われる大企業に人が集まるのは当然のことです。
逆に言えば、「不安定で給与も決して高くない、更にボーナスも約束されず、福利厚生面も充実していない」中小企業に大企業以上に人が集まることは、物理的に難しいといえます。それゆえ、中小企業には「人材が集まらない」ということが常態化しています。
(2)モノ
同じ設備投資をするにしても、大企業なら必要な設備、今ならDX化された高機能の最新設備を導入できるのは大企業です。
中小企業は、補助金という高いハードルを越え煩雑な手続きを経て設備投資するか、中古の「出物」が見つかるのを待ってやっと設備できるというのが実情であり、設備面での充実度も当然のことながら、中小企業は大企業に大きく水をあけられています。
(3)金
大企業は安定的に収益を上げていることが多いのに対して、中小企業は、概して大企業が集中購買等でのボリュームディスカウントや外注業者に対する値引き要求が通りやすいために、原価を下げることが比較的容易です。
つまり、同じ製品やサービスを提供するにも原価という入り口から金額差があることから、利益幅に大きな差があります。
更に広告宣伝力にも差があるために、販売力で更に差がつき、利益率×販売数=利益額とすれば、大企業とは歴然とした資金力の差がついているといえます。
(4)情報
こう考えると、人材資源、施設設備などモノ資源、そして資金資源に差があることから、当然集まってくる情報資源にも大きな差が生まれているといえます。
Ⅱ.資源の差を埋めるのはメンテナンス
こう考えてくると、中小企業には取り付く島がないかのように絶望する方も少なくないか思います。ですが、ここでの問題は「ではどうやって対策するか」ということです。
そこでおすすめしたいのが、「経営資源のメインテナンス」です。つまり、資源を大事に維持管理し、資源をムダなく活用していくことです。
人のメインテナンス
中小企業の社員は大企業のように人材がそろっているわけではありません。しかし、一人一人の技量や目線に合わせてお金をかけずともハンズオン(手取り足取り)で教育訓練していくことはできます。
大企業のように一律に教育することは難しくともその人に力量に合わせて、面倒と思うことなく向き合って、育てる努力をすることです。
顔の見える中小企業ではその継続で、人材投資金額が少なくとも育成努力相応の人材資源活用は必ずできます。つまり、人のメインテナンスが重要です。
モノのメインテナンス
施設や設備に投資してもその後の維持管理が十分になされないケースは多く見られます。
モノというのは、いつでも正常に動くように、あるいはちょっとした清掃はじめ5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を継続することで常にいい状態で使い続けることができます。
よく、汚いトイレときれいなトイレがありますが、きれいなトイレは管理が行き届いているから、使う人もきれいに使うという相乗効果を生むのです。維持管理としてのモノのメンテナンスを心がける価値があります。
金のメインテナンス
お金のメインテナンスというのは想像つきにくいですが、簡単に言えば、常に計画的な資金繰り管理を行うこと、将来を見越して、設備投資資金を計画的に投入するなど必要資金の計画的な配置を行うことです。それこそが金のメインテナンスといえます。
情報のメインテナンス
これは、簡単にいえば、情報収集のアンテナを意図的に高くし、また価値ある情報を精査して活用できる、「情報の目利き」の力量を上げる努力が必要です。
また内外のアンテナを高くし、かつ外部に対してオープンな情報提供を行うことで、外部からも情報が入りやすくなります。
つまり、情報のメインテナンスは、情報の目利きと、高いアンテナ、外部との情報共有・情報交換できる交流づくりそのものなのです。
Ⅲ.経営資源のメインテナンスの意義
元々、中小企業には大企業との資源の差は歴然とあります。だから勝負をあきらめるのではなく、相応に「資源のメインテナンス」に力を入れ、常に資源の最適化を図る努力を続けることです。
そうすれば、利益の道は開け、大企業以上に効率的に利益を上げるなど「山は動く」ことが可能になります。