ビジネスを成功に導く
今から8年ほど前になります。営業所を訪れた時、社長は朝早くからたった一人で販売機器を置く倉庫の片付けと掃除をしていました。私が社長に声を掛けると、社長はこう言いました。「この営業所が当社の足かせになっているんです。営業所の建物は傾いた古いプレハブ小屋。営業所の所員は、本社から離れているせいもあり、現地採用の社員もおり、いわば「治外法権」の独立国となっています。だから、営業らしいトークもできておらず、身だしなみもできていない。二人の事務バイトの女性は、交代制でいつもヒマそう。私は、この営業所を利益の出る事業所にして、社員にも胸を張れるオフィスを作ってやりたいんですよ。」と社長は熱く語ったのでした。マインドアップ それからというもの、「営業所改革プロジェクト」を開始したのです。今まで、本社から独立して営々と事業をしてきましたが、当然利益は上がりませんでした。まずプロジェクト初年度で営業所の“営業利益1000万円”というとてつもない目標を作ったのです。率直とてもこれまでマイナスに近い営業所で1億程度の売上しかないなかで、不可能に近い数字でした。しかし、あえて社長は皆にこう言ったのです。「私は、いつも営業所に来るたびに、このオンボロで傾いた営業所を見て忍びないと感じている。すぐにも建て替えたいけれど、お金もかかる。しかし、皆には気持ちのいいオフィスで仕事をしてほしいと考えている。そこで、どうだろうか、『年度営業利益1000万円を獲得出来たら、営業所を建て替えること』を約束する!だから、これまでのやり方を根本から改善して、必ずや達成してほしい。」と言い切ったのでした。社長は既に営業所の建て替えの腹は決まっていました。しかし、皆のマインドをアップさせる意味で、「結果を出したら・・」という言い方をしたのでした。これなら、皆も「営業所改革プロジェクト」にも身が入ります。こうして、「営業所改革プロジェクト」は見事にキックオフしたのでした。
人材を育てる まずは、挨拶もろくにできない営業所でしたし、電話の受け答えもできておらず、肝心要の営業トークもできていませんでした。そして、普段の業務の改善意識はないに等しい状況でした。やることは簡単でした。「できていないことを改善すること」しかありません。但し、“成果のでるやり方”を考えることが重要でした。マナーインストラクターを呼んで、電話の受け答えから再教育 営業品目の学習から始め、営業のトークスクリプトを皆で考える。そして、お客様とやり取りをロールプレイで行って、皆で良し悪しの意見交換をする。「100の改善」という目標を掲げ、改善できたことはどんな細かいこと「花瓶の埃を定期的にふき取る」「掲示物をリストラして、本当に守るべき目標等だけにして、曲がりないようにピンと貼る」でも改善成果として、追記。・①の外部からマナーインストラクターを呼んで、セミナーを実施した時のことです。社長は皆にセミナー終了後に、セミナーの成果を尋ねたのでした。すると、「役に立った」「まあまあわかった」などのコメントがあり、実際やらせてみると、大きな変化は見られませんでした。その時社長の怒声が飛びました。「会社は、君たちに変わってもらうために、現金を出して人を呼んで犠牲を払って時間をとっているんだぞ」セミナーやって『劇的に変わらなくてどうするんだ!できるように、もう一回ちゃんとやれ!』と言ったのです。気楽にセミナーを流していた社員たちは、度肝を抜かれたのです。私は再度講師を呼んで、再セミナーを実施しました。今度は一回で目に見える変化が現れたのでした。・今まで営業トークのほとんど展開しなかった点検作業員である社員たちでしたが、場面を想定して、お互いに意見を言い合う場を作ると、結構皆で考え合ってロールプレイを楽しんでやるようになったのです。この時、口下手で営業経験0であった若手は、ストレスからか机の引き出しに「辞表」を用意していたのでした。しかし、この経験を乗り越えた彼は、8年後の現在、営業所のトッププレイヤーとして、お客様からのオファーNO.1に育っています。
業績を見える化する。やみくもに営業所の利益をV字でアップさせることはできません。まず、売上と利益のグラフを作り、壁に貼りました。そして目標達成の可否を毎月末と月中間でチェックし、なぜいかないのかを検証し、対策しました。簡単なことですが、改善策を具体化させたのです。そうこうして、(2)の人材育成策が功を奏して、いい線まで伸びていきました。但し、年度末の3か月はこの業界的には、例年厳しい時期。でも何とか達成しなければとの思いでした。そこで、今まで発揮しなかった「営業トーク」のロールプレイが生きたのです。機器点検が終わったタイミングで、「今このキャンペーンやってます。」「うちリフォームもやってるんですよ」それらの一言が出るようになったのです。これが大きい仕事を数件受注する結果になり、営業利益目標1000万円は無事達成したのです。社長は、こうして約束通り、営業所を建設したのです。皆の働きやすいニューオフィスに皆のモチベーションは最高潮に達し、その後数年間更なる業績継続を果たしたのです。 もちろん、その後多少の波がありましたが、現在はどうでしょう。環境改善も後押しし、若手や女子事務の優秀で、対応も良い人達が揃ってきたのです。こうして、環境・人材・業績が揃ってくると、客先の評判を良くなり、大口の客先もその信頼向上から多くの仕事をお願いしてくれるまでとなりました。環境改善からスタートした営業所改革がゆるぎない経営資源を“雪だるま式”に獲得したのです。環境を整え、人材を育て、客先の信頼を獲得する。この社長は営業所改革を通して営業所の「ビジネスを成功に導き」会社の業績向上に大きな効果を発揮させることに成功したのです。社長は今も、今後のビジネスがいつまでも継続していけるよう、不断の努力を続けています。