医療の質コンサルティング
「医療の質」?経営コンサルタントが何を書いているの?と言われそうですが、医療機関や介護施設等で、この「医療の質」が問われています。皆さんが、病院に行き、治療を受ける機会は多いと思いますが、お医者様の診察により、処置をしてもらう場合、場合によっては検査を受け、薬剤を処方してもらったり、X線やCTスキャナーで検査を受けることもあります。また、結果が思わしくなければ、「入院」を指示される場合もあります。このように、病院で受ける治療や処置は、多くの専門家の連係プレイで行われています。多くの専門家というのは、医師・看護師・検査技師・薬剤師・理学療法士などです。その場合、これらの専門家が自分の領域で確実に専門家のしての仕事をしてもらうことが、マスト項目なわけで、そのコミュニケーションについて完全であり、一切のミスがないことが求められます。
かつて、患者の取り違えや、大きな医療ミスで人が死に至るなどのあってはならない事故が良く報道された時期があります。これには、ミスを引き起こす相応の原因があったのです。その意味で、西暦2000年前後で多発したこのような医療事故以降、医療機関にも危機感が走り、多くの病院で、確実な「外来プロセス」管理や「入院プロセス」管理を実現するための取組として、医療の質マネジメントシステム(QMS)の取組が全国のいくつかの官民の大病院でスタートしました。それまで、病院には病院機能評価という病院に具備されるべき機能をチェックするしくみはありましたが、病院自体が完全な外来診療や入院診療その他、急性期・回復期・慢性期などの病気やケガの治療の各段階において、それぞれ、確実な医療を提供するための医療の質マネジメントシステムが本格的に展開されてきました。
「インシデント」をご存知ですが、簡単に言えば、医療のプロセスでミスは発生したが人に害を及ぼすまでには至らなかった、医療行為のミスを指します。製造業や建設業でいう「ヒヤリハット」と近い意味です。これが更に人に影響を及ぼすミスを「アクシデント」といい、病院ではこれらのインシデントやアクシデントの再発防止の報告は、これらの頭文字をとって、「IAレポート」と呼んでいます。病院の場合は、これらの医療ミスを隠ぺいしすることは許されず、「IAレポート」はそのミスの程度をランクに分け、報告する義務があります。大病院の場合は、その規模によってはIAレポートは、年間数千件にも及びます。
「えつ!そんなのミスが起きてるの?」と驚く方もいるかと思いますが、実際です。
多くは投薬ミスであったり、点滴忘れであったり、ベッドからの転倒転落、指示漏れが発生したりといった様々な項目があります。決して、ほめた話ではなく、場合によっては命に係わることもあり、看過できないことだと思われるとことでしょう。これらのインシデントを表面化させ、今後の同様なミスを発生させないために「IAレポート」による報告を行って対策することは、極めて重要な改善プロセスであり、これらの努力で以前のような重大な医療事項はめったに起きることがなくなってきています。
最近のコロナ禍でも病院では、感染防止委員会を組織し、院内でのコロナの陽性者発生やクラスター発生防止のための取組をしていますが、基本的にウィルスを引き込まれやすい環境にある病院なので、その発生リスクの程度に合わせた感染対策が求められます。しかし、もし、陽性者発生やクラスター発生などのインシデント・アクシデントが発生した場合は、まずは感染拡大の処置が必要です。その上でクラスター防止などの確実な再発防止が求められます。発生したことが事実であれば、原因を追求し、処置手順を考え、拡大防止のための濃厚接触者への対応や、発熱者の来場に対する「水際作戦」による入場ブロックなどを行い、徐々に発生時の対応マニュアル等を整備していきます。
これらのしくみづくりは、製造業の生産現場で行ってきた生産管理上の品質管理システムの考え方が大いに役立っています。5Sを基本にして、コミュニケーションや情報共有を各日に実施し、指示漏れがないように作業指示書を共有して確実に各プロセスを実施し、各プロセスの検査を確実に行うといったフロー&マニュアルの実行です。マネジメントシステムは製造現場の品質管理からスタートしていますが、今や、命を守る医療の質の向上のために大いに役立っています。
私も経営コンサルタントとして、建設業や製造業以外にこういった医療機関や介護福祉施設のマネジメント指導による、「医療の質」の確保により命を守る業務も全国でコンサルタントとしての使命感を持って行っています。
以 上