改善はC⇒A⇒P⇒Dの実行から
経営や事業を改善するときに、PDCAサイクルを使います。これは、経営や事業は、まず計画(P・・PLAN)し、実行してみて(D・・DO)、その結果を評価(C・・CHECK)した上、不十分な点の対策(A・・ACT)を立てる。そして、また計画(P)に戻り、再度実行する。ということです。物事は経営や事業に限らず、思った意図(計画)通りに行かないことは、よくあることです。ただ、計画通りに行かない時に、原因を追究して、対策を立てて、方法を変えて実行してみる。そして、これを「うまくいくまで」改善を繰り返す。そんな「『改善』をしなければ・・」と考えるタイプの人がいます。その一方で、その真逆で、「うまくいかない⇒こまったな⇒放置」という、改善をしないタイプの人がおり、大抵の人は多かれ少なかれ、どちらかのタイプに属しています。当然前者の方が成功に近づけそうだし、自分もそうありたいと誰しもが考えます。でも、しばらく時間が経ってみると、後者の「課題放置型」に陥っているケースが多くあります。何故でしょう。これは、経営コンサルタントとして、様々な認識の人の課題解決の道すじをサポートし、順調に改善できる人と、そうでない人を見てきた者として、よく理解できます。かんたんに言えば、改善の原因追求と対策が1度だけサイクルを回してうまく行かないと「うまくいかないな!」といって投げ出してしまい、結果改善されずに放置されてしまうことが多々あるからです。つまり、PDCAを絵に描いたようにうまく回せず、うまく行かないと嫌になってしまい、うまく行かないまま放置してしまうからです。だとすれば、このPDCAをどのように回すか、うまく行かせる方法を考えることが大事です。本に書いてある「PDCAサイクル」をうのみにして教科書通りにやった所でそんなに急にうまくできるはずはありません。
改善をうまくいかせるには、方法があるのです。そもそも、計画すると言いますが、何か計画する時は、元ネタである「理想像」などがあるはずです。つまり、計画から入るのではなく、その前にうまく行かない「現状」があったりするわけです。ですからPDCAをP(計画)から強引にスタートさせることに無理があるのです。よく考えてみて下さい。経営や事業、各部門の業務を改善しようという時にはまず、うまくいっていない「現状」があるのです。ですから、「理想像」になりえず、うまく行っていないのはなぜかを調査して原因を調べる。そして、原因を取り去るためにはどうしたらいいか、原因除去の改善策(再発防止策)をあの手この手を使って考えます。そうして、その改善の方向性を出すことから、改善の具体的な計画をたて、実行してみるというのが実は、自然なやり方であることに気付くはずです。ですから、PDCAサイクルは、通常の継続事業では、P(計画)の頭からスタートするのではなく、現状の調査確認であるCからスタートして「C⇒A⇒P⇒D」の順で実現するのが現実的な手順です。
具体的な実例をみていきましょう。A社はこのコロナ禍で、建築工事の受注が去年の半分以下です。さすがに去年並の20億を達成したい「理想像」からかけ離れ、この分では10億に満たないことが懸念されました。そこで、なぜそうなったのか原因の調査をしたのです。すると、いくつも原因と思われることが挙がりました。
①去年までは、景気も良く仕事は断るほどありましたが、今年がコロナ禍で先行きが見えず、発注者の「様子眺め」になっていることです。(発注手控・・外部要因)
②これまでは、黙っていても一定額の受注はできていたので、当社がこれまでいくらで各専門工事(大工や内装その他)を発注してきたのかのデータの蓄積である単価データベースを持つことなく、経験と勘で価格を決定して見積していました。(見積単価・・内部要因)
③れまで苦労せずに仕事がとれていたため、過去からの顧客回りもせず、営業ではプレゼンテーション資料も持たず、また営業行動管理もせずにどこを営業回りしたかもわからないという、全く組織的でない個人プレーの営業スタイルになっていました。・・(営業戦略や営業管理の不在・・内部要因)
これらの原因(C・・チェック)が調査の結果わかったので、対策を立案して営業改善の方向性(A・・アクト)を決め、営業戦略を計画(P・・プラン)したたのです。
①に対しては、まず外部環境は変えられない、でも行動は変えられる。だから、案件が少なければ、これまで以上にリモートを含めた顧客アプローチによる営業訪問件数を大幅に増やしました。(顧客アクセス数の増加)
②に対しては、これまでの購買価格の最安値のデータベースを整備し、安く買ったら単価の更新をそのたびに図りました。(最安値単価リスト作り)
③に対しては、営業会議や情報会議を週1回は、確実に行い、営業行動記録をクラウド利用の営業管理アプリにいれて情報共有する。そして、それぞれの案件の営業戦略を意見交換して、事業計画のフォーマットを作り、かつプレゼ資料をハイセンスなデザインのものに切り替える。こうして、営業戦略や営業管理を徹底させました。(組織営業・顧客重視営業への転換)
これらの営業改善の対策立案(A)と営業戦略計画(P)を実行し、定着を図って行ったのです。もちろん、戸惑いもあり(とりわけ中高年社員)これまでのスタイルを簡単には変えることはできませんでしたが、外部コンサルタントである私が「計画通りやってますか?」「うまくいってますか?」「なぜうまくいかないのでしょう?」と優しく声掛けしたことで、だんだん当初のしくみのぎごちない運用が徐々に改善されました。結果はついてくるものです。前半の落ち込みまでは現在カバーできていませんが、ほぼ月次では去年並以上の売上を達成できるように回復しました。なぜでしょう?簡単です、迷いや戸惑いがあっても必ずうまく行くと考えて、C⇒A⇒P⇒Dの手順を実行したからです。
「改善サイクルをまわすのは難しい」と考えがちです。しかし、本当にむずかしいのでしょうか?トライアル&エラーは当然です。しかし、必ずうまく行かせると考え続ける粘りと、現状調査から始めるC⇒A⇒P⇒Dの手順の実行が成功のカギなのです。
経営コンサルタントによるサポートは、このように実現します。